当院について
近年、日本でも乳がんの発症が急速に増加し、日本人女性の約9人に1人が一生の間に乳がんに罹患するといわれております。
当院はこのような現状に対して理想的な診療を行うために最新の診断装置、快適な入院施設、および外来化学療法室を備えた乳腺専門のクリニックとして2006年11月故沢井清司前院長によって開設されました。
当院では検診で精密検査を勧められた方、乳房にしこりがあるなど何らかの症状のある方、あるいは症状はなくても乳がん検診(任意型検診)を受けたいと思っておられる方の診察を行っております。
初診の方でもその日のうちに検査を終え、異常が無かった方は安心してお帰り頂けるよう、また更に検査が必要な方は迅速に次のステップへ進めるようになっております。
乳がんと診断された方に対しては整容性を重視した手術、術前術後の化学療法、ホルモン療法、それに放射線療法など一人ひとりの病状に最も適した治療を行うことによって、乳がんの根治を目指しております。さらに外科医のみならず、内科医、放射線診断医、看護師、薬剤師、技師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーがチームとなり診断から治療、そして術後の生活様式まで患者さんの身体的のみならず心理的なきめ細かいサポートも行うことで皆様のお役に立てるよう努めております。
近年、乳がんの治療は急速に進歩しておりStage 0からIVまで総合して5年生存率は90%以上になりました。これは手術の方法が進歩したからではなく、乳がんの治療には全身の治療が必要であるとの考えから新しい抗がん剤やホルモン療法が次々に開発され集会的に使われるようになったからです。
さらに重要なことは乳がんにはホルモン療法が効くタイプと効かないタイプ、ハーセプチンという薬が効くタイプと効かないタイプがあり、またリンパ節に転移がある場合と無い場合、閉経前と閉経後、浸潤がんと非浸潤がんなど、どれに当てはまるかによって最善の治療は異なります。
膨大な臨床試験に基づいてその効果が科学的に実証された最新の標準治療を行うことによって再発率を減らすことができます。手術、化学療法、ホルモン療法、放射線治療の中からそれぞれのがんの性質に一番効果がある治療の戦略を立てることを個別化治療といいます。
当院ではどのようながんにはどのような治療法が有効であるかをまとめた日本乳がん学会のガイドラインや米国NCCNのガイドラインに沿って全ての症例の最適の治療方法をカンファレンスで話し合い決めています。
乳がんの手術の基本はがん組織を完全に切除することですが、乳房温存術の場合取り残しをなくそうとして切除範囲が大きくなればなるほど残った乳房が変形します。
目安として3cm以下の腫瘍では温存術が可能ですが、当院では術前化学療法、組織拡張器からシリコンインプラントによる再建術、広背筋皮弁による乳房再建術、側胸部の脂肪を使用した乳房部分切除術、Suture-scaffold法という最新の切除部の修復法、さらになるべく目立たない皮膚切開を加えるなどを組み合わせることによって乳がんの根治性と整容性を両立させることに努めています。乳房切除の方でも、再建のご案内など患者さんのケースにあわせてご説明しています。
またセンチネルリンパ節生検を行うことによって不必要な腋窩郭清は省略し、術後のリンパ浮腫などの合併症を最小限に抑えています。同部への転移の有無はOSNA法という感度の高いPCR検査にて微小な転移も検出可能です。
術前に腫瘍を縮小させるための化学療法、あるいは術後に再発予防のために行う補助化学療法は乳がんの治療において大きな役割を担っています。
現在は新しく治療を始める初回のみ1泊2日の入院をお願いしていますが、それ以外は支持療法を習熟する事により、副作用を最小限に抑え可能な限り外来で化学療法を受けて頂き、普通どおり日常生活を送って頂けるように配慮しております。
初診の方でも安心して受診していただけるよう、女性医師による外来を開いております。女性スタッフによる乳がん検診をご希望の方は予約時にお申し出ください。
初診の方でも原則として受診の当日にマンモグラフィと乳腺エコーの検査を行い、異常がなければ安心してお帰りいただけます。
これらの検査でさらに精密検査が必要な場合はMRIで詳しい画像検査と針生検などの組織検査を行って悪性か良性かの迅速な診断を行います。
特に従来は生検することが難しかったマンモグラフィ上の微小石灰化病変や針生検では正確な診断ができなかった小さな病変に対してもマンモトーム生検(吸引式生検システム)を行うことによって5mm程の切開で組織を採取することができるようになりました。
またこの装置によってDCIS(非浸潤性乳管癌)と呼ばれるほとんど転移しない早期のがんが多数見つかっています。更に乳がんと診断された方や治療中の方で転移がないかどうかを検査するためにCTやRIシンチグラフィ装置も完備し、基本的にすべての検査を院内で受けていただくことが可能です。
乳がんの治療の最大の目的は乳がんを完治させることですが、身体的な治療だけでは十分ではありません。乳房に傷跡や変形が残ったことによる精神的な落ち込み、再発するのではないかという不安、家族や職場に迷惑をかけてしまったのではないかと言う罪悪感など精神的な問題に対してもケアが必要です。
様々な不安を抱えてらっしゃる患者さんに対して、当院では診断から治療に至るまで看護師含め同じスタッフが関わり、治療選択の意思決定においても一人ひとりに時間をかけて接することで、納得して治療が受けられるようサポートしております。
また臨床心理士によるカウンセリングやサポートグループを行っておりメンタルケアにも力を入れています。
残念ながら乳がんの場合、遠隔転移をきたすと化学療法やホルモン治療を行っても現在の医学では完全に治癒することはなかなか困難です。
病状が進むにつれて全身のだるさ、骨転移による痛み、肺転移による呼吸困難、腹水や胸水の貯留などの症状が出てくる場合があります。
当院ではこのような症状が出てきてもなるべく苦痛を軽減するよう必要に応じて在宅支援ができるよう連携を図り緩和治療を行っております。また終末期をどこで過ごされたいかは、ご本人や御家族のご希望を尊重して相談させていただきます。